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ビスホスホネート製剤は,海外においては「悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症」や「骨粗鬆症」の治療のほか,癌の骨転移に伴う疼痛や骨転移の進行を遅らせる治療薬として広く使用されている。しかしながら,本邦では癌の骨転移の治療に適応をもつビスホスホネート製剤がなく,その使用が制限されていたが,ようやくパミドロネート(アレディアR)が乳癌の骨転移※の治療薬として承認を受けたことから,癌の骨転移の治療も新たな前進をとげたといえる。
骨は,肺や肝に次いで癌の転移をきたしやすい臓器である。骨転移はそれ自体が直接生命にかかわることはほとんどないが,骨転移に由来する疼痛や病的骨折,脊髄圧迫などにより患者のQOLを著しく低下させる。特に乳癌は,他の癌と比べて骨転移を生じてからの臨床経過が長いため,症状が発現した際の患者の苦痛は大きく,骨転移による症状の発現や進行をいかに防止し,患者のQOLを維持するかが重要な課題となる。今回は,こうした観点から,乳癌の骨転移を中心に,骨転移の診断のポイントと早期発見の意義について,癌研究会附属病院の小泉満先生にお話しいただいた。
どのような癌であっても骨転移する可能性はありますが,骨転移を見逃さないためには,骨転移を起こしやすい癌の種類や転移を起こす時期,転移しやすい部位をよく理解しておくことが大切です。また,後でお話ししますように骨転移のタイプによって画像に描出される転移像が異なり,オーダーすべき有効な検査法も違ってきますので,どのようなタイプの転移巣を作りやすいかも念頭におかなければなりません。
骨転移しやすい代表的な癌は,女性では乳癌,男性では前立腺癌。この他,肺癌や甲状腺癌,腎癌も高頻度に起こります。剖検例における検討では,乳癌は57〜73%,前立腺癌は57〜84%,肺癌は19〜32%,甲状腺癌は19〜50%,腎癌は23〜45%に骨転移が認められたと報告されており,これらの癌では骨転移に特に注意すべきといえます(図1)。しかし,なぜ,骨転移を起こしやすい癌と起こしにくい癌があるのかは,まだ明確にされていません。

骨転移は,前立腺癌や肺癌,甲状腺癌などでは,初診時あるいは術後2〜3年以内に出現します。従って,このような癌で骨転移のリスクが高いと考えられる場合は,一定期間,重点的にフォローしていれば早期に発見することは可能です。しかし,乳癌の場合は,手術で完治したような症例でも,術後10年以上経過してから骨転移を起こすことがあります。
癌研で乳癌術後の骨転移発現状況を検討した結果では,術後の経過期間にかかわらず年間2〜3%くらいの頻度で骨転移を生じ,この割合は術後10年以上を経ても変化しませんでした(図2)。この結果から,乳癌の場合は,術後長期にわたる管理が不可欠であり,術後10年以上経った患者さんでも痛みを訴えたら,骨転移を疑い,きちんとした検査を行う必要があるといえます。

骨転移を起しやすい部位も,癌の種類によって異なります。一般に最も多いのは脊椎,骨盤骨,肋骨,胸骨などの体幹部の骨と四肢の近位部の骨です。この辺りの静脈は弁がないため,多方向に血液が流れて血液が停滞しやすく(Batson静脈叢と呼ばれる),癌細胞が着床しやすいとされています。成人の骨髄の分布ともほぼ一致します。
その中で,乳癌では胸郭の骨(胸骨,肋骨,胸椎)への転移,前立腺癌や直腸癌など骨盤内にできる癌は骨盤骨への転移を多く認め,解剖学的に原発巣に近い骨に転移しやすいことが知られています。四肢末端の骨などへ転移することもありますが,これは稀なケースであり,骨転移を起こしやすい部位を把握しておくことは,骨転移のスクリーニング法を考えるときの参考になります。
骨転移の分類(タイプ)には,病理学的分類と臨床的分類があり,病理学的分類では,溶骨型,造骨型,混合型,骨梁間(こつりょうかん)型の4つに分けられます。ただし,骨梁間型は,網目状の骨梁の間の骨髄に腫瘍細胞がびまん性に這うように広がり,画像上診断するのが難しいため,臨床分類では(1)溶骨型,(2)造骨型,(3)混合型の3つに分けています。
溶骨型は,骨が溶解されるタイプの骨転移を起こすもの,造骨型は骨を作るタイプの骨転移を起こすもので,同じ患者さんの中で溶骨型と造骨型の混在が明らかな場合を混合型としています。
厳密にいうとほとんどの骨転移巣は骨を溶かすプロセスと骨を造るプロセスの両者が混在しており,混合型といえます。画像診断でどちらの要素が強いかで,便宜上3つの型に分けていることになります。
溶骨型の骨転移を起こす代表的な癌は,甲状腺癌や腎癌,肺癌,副腎癌,悪性黒色腫などです。また,固形癌ではありませんが,多発性骨髄腫,悪性リンパ腫なども溶骨型の骨転移(浸潤)を起こします。造骨型の骨転移を起こす代表的な癌は前立腺癌,混合型の骨転移を起こす代表的な癌は乳癌です(表1)。この分類は,画像で骨転移を診断する上できわめて重要となります。
| 癌種 | 骨転移のタイプ | 骨転移の頻度 |
|---|---|---|
| 乳癌 | 混合型および溶骨型,時に造骨型 | 非常に多い |
| 前立腺癌 | 通常造骨型,稀に溶骨型 | 非常に多い |
| 肺癌 | 溶骨型,時に混合型,稀に造骨型 | かなり多い |
| 甲状腺癌 | 常に溶骨型 | かなり多い |
| 腎癌 | 常に溶骨型 | かなり多い |
| 副腎癌 | 常に溶骨型 | かなり多い |
| 悪性黒色腫 | 常に溶骨型 | かなり多い |
小泉満:The BONE, 18(5), 583, 2004より抜粋
骨転移の診断に用いられる主な検査法は,単純X線,骨シンチグラフィ,CT,MRIで,最近は,PETも用いられるようになっています。各検査法には得意,不得意,あるいは長所と短所がありますので,有効な検査を選択するために,その特徴を理解しておく必要があります(表2)。
| 方法 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 単純X線 |
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| CT |
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| MRI |
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| 骨シンチグラフィ |
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| PET |
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小泉満:The BONE, 18(5), 583, 2004を一部改変
単純X線は,ほとんどの診療所や病院にあり,安価で簡単に検査できますが,感度が悪く,通常,骨塩量の30〜50%以上の変化がないと異常所見として捉えることができません。また,解剖学的に重なりの多い部位では,明らかな異常が生じても診断が困難なことも多く,骨転移のスクリーニングに使用することはお勧めできません。しかし,単純X線で異常が発見された場合は,その所見から骨転移などの確定的な診断が可能なことが多く,病的骨折や切迫骨折の診断には欠かせません。また,外来で患者さんが痛みがあると訴えたときに撮影するのは意味があると思います。
骨シンチグラフィは,全身を一度に検索でき,感度が高いという点で,骨転移のスクリーニングに最もよく用いられているものです。この検査は,ビスホスホネートにTc-99mを標識した製剤を投与し,この製剤が骨新生が盛んなところに集積する性質を利用して,ガンマカメラで撮影し画像化したものです。骨新生の盛んな造骨型や混合型の骨転移では検出感度に優れていますが,骨折など良性の病気でも集積が増し,非特異的な検査といえます。このため,典型的な像を示す場合は,骨転移を容易に診断することができますが,骨転移が疑わしい場合は,CTやMRIを追加して確認する必要があります。また,骨新生の乏しい溶骨型の骨転移では集積しないことがありますので,CTやMRIを組み合わせて診断しないと,骨転移を見逃してしまう可能性があります。
CTは,単純X線と比べて骨や軟部組織(腫瘍)の濃度分解能に優れ,断層像であるため検出感度が高く,頭蓋底,脊椎,骨盤骨など,骨の重なっている部分や骨の形状が複雑な部位での診断能にも優れています。溶骨型の骨転移では,骨破壊は骨の欠損と軟部腫瘍への置換として認められ,進行すると,骨皮質を破壊して骨外に進展し,骨外の軟部腫瘍として認められるようになります。造骨型の骨転移では高吸収域の病変として認められます。
MRIは,感度が高く,任意の断層面が撮れるという利点があり,CTに取って代わりつつあります。MRIによる骨転移の診断は,通常スピンエコー法が用いられ,溶骨型はT1強調画像で骨髄よりも低信号,T2強調画像で高信号となり,造骨型ではT1,T2とも低信号となります。ただし,MRIではさまざまな撮影法があり,用いた方法により信号が異なってきます。MRIは,初期の微小転移や骨梁間転移を描出できる唯一の方法ですが,CTと同様に通常の撮影法では全身像を撮るのが難しいため,骨転移の鑑別や広がり診断に主に用いられています。
PETは,核医学診断法の一つで,悪性腫瘍の転移診断には1 8F - F D G(2 -fluoro-2-deoxy-D-glucose)が用いられます。FDGはブドウ糖のアナログで,ブドウ糖と同様に細胞膜を通過してリン酸化され,FDG-6-リン酸となりますが,それ以降の代謝を受けず,糖代謝が亢進している癌細胞のなかに蓄積しやすい性質をもっています。FDG-PETは1回の検査で全身を検索でき,リンパ節転移などの小病変の発見精度の向上が期待されています。癌細胞がたくさん集まっているところで検出力が高くなるため,骨転移では溶骨型の診断に威力を発揮します。しかし,造骨型の骨転移巣では骨が作られているところに,癌細胞自体はまばらにしか存在していないことが多いので,検出力が低下します。また,機械が非常に高価で限られた施設でしか検査できないこと,診断能の評価が定まっていないなどの問題点があります。
このように骨転移の画像診断は一長一短あり,精度に優れた検査では検査費用も高くなることから,症状のない患者の定期的なスクリーニングに用いるのに否定的な考え方もあり,簡便に検査ができて,安価で感度の高い骨代謝マーカーの臨床応用の可能性が検討されています。
骨代謝マーカーは,骨が破壊されるときに血中や尿中に出てくる骨吸収マーカーと,骨が作られる過程で出てくる骨形成マーカーの2つに大きく分けられます。
骨は鉄筋コンクリートのような構造をしていて,いわゆる鉄筋部分の主成分はI型コラーゲン,コンクリート部分の主成分はハイドロキシアパタイトです。
I型コラーゲン分子は,3本のポリペプチドが絡み合った3重らせん構造をしていて,そのN端,C端には3重らせんを形成しない部分(テロペプチド)が存在します。また,このテロペプチド部分にコラーゲン分子をつなぎ合わせる橋のようなもの(架橋)が出ていて,隣接するI型コラーゲン分子が結合し,強度を強めています(図3)。溶骨型骨転移では,転移局所の骨破壊が著しく亢進しており,骨からI型コラーゲン分解産物が放出されます。骨吸収マーカーのほとんどはこのI型コラーゲンの架橋周辺の分解産物で(表3 ),主に2 種類の酵素,すなわちカテプシンKとmatrix metalloproteinases(MMPs)が関与しています。
カテプシンKは,破骨細胞に特異的な酵素で,I 型コラーゲンを分解して,架橋部分を含むテロペプチドであるNTx(I型コラーゲン架橋N-テロペプチド)やCTx(I型コラーゲン架橋C-テロペプチド),架橋部分のDPD(デオキシピリジノリン)などが生成されます。MMPsを介する経路では,CTxよりやや大きいICTP(I型コラーゲン-C-テロペプチド)という断片まで分解されます。これらは血液や尿を用いて測定することができますが,NTxやCTx,DPDは生理的な骨吸収の亢進(骨粗鬆症や閉経)でも増加するのに対し,ICTPは病的な骨吸収(骨転移など)でしか上昇しません。

| マーカー名 | 略号 | 検体 | 保険適用 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| I型コラーゲン分解産物 | 架橋体 | デオキシピリジノリン deoxypyridinoline |
DPD | 尿 | 遊離型を測定
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| ペプチド結合架橋体 | I型コラーゲン架橋N-テロペプチド N-terminal crosslinking telopeptide of type I collagen |
NTx | 尿血清 |
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| I型コラーゲン架橋C-テロペプチド C-terminal crosslinking telopeptide of type I collagen |
CTx | 尿 |
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| I型コラーゲンC-テロペプチド C-terminal crosslinking telopeptide of type I collagen generated by MMP |
ICTP | 血清 |
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| 破骨細胞由来酵素 | 酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ-5b** tartrate-resistant acid phosphatase 5b |
TRAP 5b | 血清 血漿 |
なし | |
* 乳癌,肺癌,前立腺癌であると確定診断された患者について,骨転移の診断に使用した場合に悪性腫瘍特異物質治療管理料として算定
** 最近注目されている骨吸収マーカー
この他,I型コラーゲンの分解産物以外の骨吸収マーカーとして,TRAP(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)があります。これは破骨細胞から分泌されるもので,TRAP染色は破骨細胞の免疫染色に用いられています。また,TRAPのサブタイプであるTRAP-5bは,骨特異性の高い吸収マーカーとして注目されています。
我々は,骨吸収マーカーの中でICTPが骨転移の程度を最もよく反映していると考えていますが,尿中のNTxの方が優れていると主張するグループもあり,スクリーニングに使用できる十分にコンセンサスの得られた骨吸収マーカーは見出されていません。骨吸収マーカーは乳癌の骨転移の治療経過観察には有用であることが報告されています。
骨形成マーカーは,骨芽細胞の増殖期,成熟期,石灰化期の3つの時期に出現する物質に分けられます(表4)。I型コラーゲンは,その前駆物質であるI 型プロコラーゲンのN端,C端が切られて形成されますが,その際切り取られて血液中に出てくるのがPINP( I 型プロコラーゲンN-プロペプチド)とPICP( I 型プロコラーゲンC - プロペプチド)です。PINPとPICPは骨芽細胞の増殖期のマーカーであり,理論的には同じと考えられますが,PINPの方がPICPより感度が少し高いとされています。成熟期に出現するマーカーには,アルカリフォスファターゼがあり,総アルカリフォスファターゼと骨型アルカリフォスファターゼを測定する方法があります。石灰化期に出現するマーカーにはオステオカルシンがあります。
| マーカー名 | 略号 | 検体 | 保険適用 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 増殖期 | コラーゲン前駆体の断片 | I型プロコラーゲンC-プロペプチド procollagen type I C-terminal propeptide |
PICP | 血清 |
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| I型プロコラーゲンN-プロペプチド procollagen type I N-terminal propeptide |
PINP | 血清 | なし | ||
| 成熟期 | 骨芽細胞由来酵素 | 骨型アルカリフォスファターゼ bone alkaline phosphatase |
BAP | 血清 |
|
| 総アルカリフォスファターゼ Total alkaline phosphatase |
Alp | 血清 |
|
||
| 石灰化期 | 石灰化の調節因子 | オステオカルシン osteocalcin, bone Gla protein |
BGP | 血清 |
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* 前立腺癌であると確定診断された患者について,骨転移の診断に使用した場合に悪性腫瘍特異物質治療管理料として算定
骨形成マーカーは,造骨型の骨転移を形成する前立腺癌で増加します。特に,増殖期や成熟期のマーカーであるPINP,骨型アルカリフォスファターゼなどが著明に増加します。しかし,石灰化期のマーカーであるオステオカルシンは増加しません。オステオカルシンが増加しない機序は明らかではありませんが,オステオカルシンをノックアウトしたマウスでは骨形成が増加することから,オステオカルシンには骨形成を調節するような生物学的な機能がある可能性が考えられています。
骨形成マーカーは,正常な骨が作られる段階では,3者とも上昇してきますから,PINPとオステオカルシン,あるいは骨型アルカリフォスファターゼとオステオカルシンの比率をみることにより,治療効果を推測することが可能です。
ただし,前立腺癌にはPSA(前立腺特異抗原)という非常に感度の高い腫瘍マーカーがありますので,PSAと骨シンチグラフィを組み合わせれば骨転移の診断が比較的容易にでき,骨形成マーカーを用いた診断を臨床に広めるのは難しい面があります。混合型の骨転移を示す乳癌では,骨吸収マーカーと骨形成マーカーを組み合わせると感度が上昇します。
骨転移の効率的なスクリーニングの方法については多くの議論がなされています。また,再発・転移の診断では,早期に診断できても有効な治療手段がなければ,予後の改善に結びつきませんから,有効な治療手段があるかどうかでも,早期発見の意義が大きく異なってきます。
乳癌は,前述のように術後10年を経過しても一定の頻度で骨転移が起こるため,本来,術後に定期的な骨転移の検索を行うことが望ましいと思われますが,乳癌の骨転移を早期に発見しても,生命予後にあまり関係しないため,スクリーニングの効率性と早期発見の意義を勘案して,ASCO(米国臨床腫瘍学会)の「乳癌術後の経過観察のガイドライン(1997)」では,症状のない患者に骨転移のスクリーニングを行うことは推奨できないとなっています。
しかし,最近は,乳癌の骨転移に対してはビスホスホネート製剤という新しい治療手段が登場しています。ビスホスホネート製剤は,骨転移巣を形成するときに不可欠な破骨細胞の働きを特異的に抑制し,骨転移に伴う骨痛や病的骨折などの骨関連事象(skeletal-related events;SREs)の発現や進行を遅らせ,QOLの改善に結びつくことが示されていますから,早期に発見する意義が高まったといえます。また,ASCOの「乳癌に対するビスホスホネートのガイドライン(2000,2003改訂)」でも,乳癌による骨転移を認めた場合は,ビスホスホネートを使用すべきであるという勧告が出されているわけですから,これからは早期発見の重要性にさらに目が向けられるようになると思います。
では,乳癌の骨転移を見逃さないために,実際にどのように術後のフォローをしたらいいかということになります。病期IIIのような明らかに進行した患者さんでは,骨転移の頻度が年間4〜5%と高くなりますから,骨シンチグラフィでフォローするとすれば,私は,術後5〜6年間は,半年に1回づつ,あるいは1年に1回検査した方がいいのではないかと考えています。非浸潤癌や病期Iの患者さんは骨転移を起こす頻度が非常に低いですから,定期的な検査を行う意味はないと思います。判断しにくいのは病期IIの患者さんです。病期IIの患者さんが骨転移を起こす頻度は3%前後ですが,現状では,骨転移の頻度が何%あったら定期的な検査を考慮すべきかという基準がありませんから,スクリーニングによる早期発見の意義をさらに検討しなければならないと思います。
もう一つ,現時点で,定期的なスクリーニングを行うべきだという強い提言ができないのは,ビスホスホネートを含む治療を症状がない段階で早期に行った方が,症状が発現してから行うよりも,明らかに有用であるというエビデンスがないことです。
1990年代のはじめにイタリアのグループが,術後乳癌患者を対象に,骨シンチグラフィやX線などを用いて定期的に転移のスクリーニングを行った群と,問診や視触診のみを行って経過観察した群を比較しています。この結果では,定期的なスクリーニングを行った方が明らかに転移の発見率が向上しましたが,予後には大きな差を認めませんでした。これは,ビスホスホネートがなかった時代の試験ですから,同様の試験を行い,ビスホスホネートの早期投与の効果を検証してみることが必要だと思います。これまでの成績を勘案すると,ビスホスホネートを早期に投与することで,少なくともQOLの改善に結びつくことは間違いないと考えられます。
最後に,繰り返しになりますが,骨転移のタイプ,すなわち造骨型か溶骨型かによって得意とする画像検査法が異なりますので,画像検査をオーダーする際は,各方法の特性を理解し,予想される骨転移のタイプに応じた検査をオーダーするようにしてください。図4〜6に,造骨型,溶骨型,混合型骨転移の画像を示しましたので,オーダーする際の参考にしていただきたいと思います。
骨代謝マーカーを診断に使用する際は,各マーカーの特性を理解し,画像診断の結果と組み合わせ,総合的に判断することが大切です。



『パミドロネートによる乳癌骨転移のマネージメント』
東京医科大学乳腺科
河野範男先生に解説いただきました。